名前の無いおばけ
名前募集中(^^
「ちょっと、この子は?」
と聞かれた。
「俺のペットだ」
と答えたら、変な目で見られた。
そして、
「こんなに可愛いのに……」
と言われた。
何が? と思ったが、よく考えたら俺もそう思うよ。まあ、いいや。
名前は後回しにして、まずは依頼を果たさなければ! 俺はおばけと一緒に冒険者ギルドへと行った。
受付のお姉さんに、
「猫探しの依頼を受けたいんだが、何か書くものはないか?」
と言った。
するとお姉さんは、
「はい、ありますよ」
と言って、ペンを渡してくれた。
俺はそれを受け取って、名前を書こうとした。
でも、名前が無いんだよな……。どうしようか…… と思っていたら、おばけが、
『ワタシガカキマス』
と言ってくれた。ありがてえ。
ちなみに、今喋ったのはこの子ではなく、俺の声である。
「ありがとうね。じゃあ、お願いするわ」
こうして、俺達は依頼を書くことができた。
内容は、『迷子の子猫を探してください!』というものだ。
これでよしっと。
「じゃあ、早速探すぞ!」
「ニャーー!!」
こうして、俺達の子猫を探す旅が始まった。
「おおっ! いたぞ!」
「ニャーン」
街から少し離れた草原にて、一匹の子猫を見つけた。
その子猫は、こちらには気づいてないが、草むらの中に隠れているようだ。
「おい、お前の仲間はどこに行ったんだ?」
そう聞いてみたのだが、「ニャーン」と鳴くばかりで答えてくれなかった。
しょうがない。直接聞くしかないだろう。
「おい、行くぞ」
「ニャッ!?」
俺は子猫に向かって走り出した。子猫は驚いて逃げようとしたが、遅い。すぐに追いついた。
「こっち向けって!」
「フギャアァ!!」
捕まえると、思いっきり引っ掻かれた。爪を立てられて痛かったが、我慢した。
「落ち着けって! 話を聞いてくれ!」
「シャーー!! フーー!!」
うおっ、全然ダメだこれ。このままだと、仲間にも見捨てられるかもしれないし、困ったなぁ。
「あの~、すみません」
ふと後ろを見ると、そこには一人の女の子がいた。
「あなた達ですか?子猫を探していた人は?」
その少女は、俺に話しかけてきた。
「ああ、そうだが……君は?」
「私は、この街に住んでいる魔術師です。昨日、うちの庭で遊んでいた子猫が、いなくなってしまったのです」
「なるほど。それで、その子猫を探してほしいということか?」
「はい。よろしくお願いします」
「わかった。じゃあ、俺たちに任せろ!」
「ニャアァァン!!!」
俺が胸を張って言うと、子猫が暴れ始めた。
「あっ、コラ! また逃げるのか!?」
「ニャアァァァン!!!」
そうして、しばらく追いかけっこが続いた後、ようやく捕まった。
「ほら、もう逃がさないからな。おとなしくしろよ?」
「…………」
「わかってくれたか。それじゃあ、さっきの話に戻るけど、お前の仲間はどこにいるんだ?」
「ニャア」
「ん? 何だって?」
「ニャア」
「いや、だから、お前の仲間はどこにいるんだって!」
「ニャア」
何を言っても、そんな返事しか返ってこない。
「あー、もう! いい加減にしてくれよ!」
「ニャアーー!!!」
すると突然、子猫が俺の手を振り払って走り出した。
「あっ、待てっ!」
だが、今度は全力で走ってもなかなか追いつけない。
「クッソォ。なんで逃げんだよぉ~!」
「ニャーーン!」
結局、それからしばらくして、街の外れまで来てしまった。
「ハァ、ハァ。ここまで来たなら大丈夫かな?」
「ニャン!」
「あれ? お前、今までどこにいたんだ?」